殺人・交通事故・汚職…など事件が報道されます。芸能人についても飲酒運転や薬物乱用など警察沙汰で一気に報道がヒートアップしていきますね。
そのような時に「なんであの人は容疑者なのにこの人はさん付けなの」という疑問を持ったことが一度はあるでしょう。実は、そこには一定の基準があるのです。そこで、どのような基準で「容疑者」や「〜さん」が使われているのか調べてみました。
1「容疑者」「被疑者」
容疑者・マスコミが使う言葉が「容疑者」
・捜査機関(警察)が逮捕してから使う。
・ある嫌疑で逮捕(身柄拘束)したら警察は取り調べて、疑い濃厚と判断したら検察庁へ身柄を送る。
・検察庁は検察官が取り調べに当たり、起訴(裁判にかける)して立証できる十分な証拠があると判断したら起訴する。
・マスコミは基本的にこの間、つまり逮捕から起訴までを「容疑者」とする。
被疑者・「容疑者」と同義だが「容疑者」はマスコミ用語で法律用語ではない。
・刑事訴訟法などで用いられるのは「被疑者」
・捜査機関は逮捕以前も「被疑者」を使う。
・逮捕・拘留されているかどうかに関係なく同じ。
・マスコミは逮捕という事実があるまで実名と合わせての報道はしない。
◎マスコミが「被疑者」を使わない理由
被疑者は「疑われている者」で疑っている主体は捜査機関。対して「容疑者」は「捜査機関が疑いをかけている者」で客観性が若干ある。捜査機関と同じ立ち位置にいるわけではないとの意味が込められている。
2「被告」「被告人」
被告人・検察が被疑者を裁判所に起訴した時点から法律上「被疑者○○」は「被告人○○」に変わる。
・警察官には裁判所へ起訴する権限はなく、起訴は必ず事件の送致を受けた検察官が行う。
被告・起訴されるとマスコミの報道は「○○容疑者」から「○○被告」に呼び名が変わる。
・無罪の可能性が極めて高いケースでは、起訴後も「○○さん」といった呼び方を続けるケースもある。
3「〜さん」
「さん」はそもそもは価値中立の敬称ですが実はいろいろなケースで用います。例えば芸能人やスポーツ選手の本業を紹介する時は呼び捨です。一方で本業を離れて善行(人助けや寄附など)を施したら「さん」付け。不祥事をしでかしても「さん」づけを多く使用します。代わりになる適切な肩書きが見当たらない場合もそうなります。
逮捕から起訴されるまでが被疑者(容疑者)なわけですから、本来なら不起訴が決まってはじめて「〜さん」という呼称となるのです。
マスコミの場合、被疑者が警察や検察に逮捕・拘留された場合のみ「〜容疑者」という呼び方をします。芸能人が保釈された際、その時から「〜さん」となりますが、本来はまだ「被疑者〜」もしくは「〜容疑者」なのですね。
4伊藤健太郎の場合
伊藤健太郎は逮捕容疑は2020年10月28日の夕方、東京都渋谷区の都道で車を運転中にバイクと衝突し、男女2人にケガを負わせながら、そのまま車で逃走した。
10月29日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕されていた俳優の伊藤健太郎容疑者(23)。同30日、警視庁の東京湾岸署で釈放された。
4−1伊藤健太郎「容疑者」から「さん」へ
今回のひき逃げ事件で逮捕され、勾留された時点ではマスコミは「伊藤健太郎容疑者」としています。
しかし、釈放されたことで「伊藤健太郎容疑者」から「伊藤健太郎さん」に呼称を変えたマスコミが多かったです。
4−2今後の処分の可能性
考えられる処分【1】不起訴
【2】起訴猶予
【3】起訴されて執行猶予つき判決
【4】起訴されて実刑判決
上記の処分が決定されるまでは正式には「被疑者伊藤健太郎」「伊藤健太郎容疑者」になります。
5まとめ
今回は逮捕された後の呼称に注目してみました。
芸能人が捕まったときなど、呼称がコロコロ変わったり、その呼称で印象が変わってきたりしますよね。
今回の記事で法律用語とマスコミが使う用語が別であることが分かりました。
私達がニュースで聞く呼称はマスコミが作った呼称の方が多いようですね。
今後も逮捕された後の報道などに注目してみてくださいね。